人工膝関節全置換術(TKA)術後リハビリテーション【炎症性浮腫】

今回は、人工膝関節全置換術(以下TKA)の急性期リハビリテーションについてまとめてみようと思います。


術後リハビリテーションを把握することは、

急性期のリハビリに携わるセラピストはもちろん

回復期リハなら、術後のリハビリはどう行われているのか?

        なぜ自宅ではなく回復期に来たのか?

訪問リハなら、利用者や家族さんから手術について

       相談を受けることもあると思います。



何より、術後の疼痛や可動域を深く考えることは

「人の心身を診る上で非常に

ヒントとなる部分が多い気がします。




そこで

・疼痛

・関節可動域(屈曲、伸展)

・筋力

・深部感覚

・歩行などなど


TKA術後のリハビリで、

テーマを絞って発信していこうと思います!



《目次》

・はじめに

・評価について

・介入方法について(治療や指導)


今回のテーマは「炎症性浮腫」!!




はじめに

腫脹と浮腫「腫れている」という現象は同じ

いずれも身体機能(関節可動域や筋出力など)に影響を与え

それに伴い、歩行や日常生活動作に悪影響を及ぼす場面が多々あるかと思います。


しかし、発生機序や対処法は大きく異なり、

セラピストの判断で軽減するか否かの結果が左右されます。



TKA術後のリハビリにおいても

術後の腫脹と思っていたけど

「なんか腫れ方が変化している」

「人によって腫れ方が違うな」

「冷やしてください」と言っても腫れが引かないな、冷やしていないのか?

患者を疑う前に自分自身の評価を疑うべきかと思います。




そこで改めて、浮腫や腫脹について整理し、術後に起こりうる「炎症性浮腫」についてまとめてみようと思います。


腫脹とは

血管の透過性が亢進し、血管内の血漿が血管外に出て貯留した状態。


浮腫とは

組織液またはリンパ液が何らかの原因により細胞内・細胞間隙、または対空内に貯留する状態。生理的な代償能力を超えて過剰な水分の貯留した状態。



炎症性浮腫

恥ずかしながら、臨床3年目の初めまでこのキーワードを知りませんでした。


炎症時には、

止血、組織分解~修復する過程で様々な物質が発生します。


その中でも、脂肪細胞などから放出される

ヒスタミンなどの化学伝達物質の作用により

血管拡張・血管透過性亢進を引き起こし

腫脹(浮腫)を引き起こします。

ついつい、術後は腫脹だ!!となりがちですが、

組織液またはリンパ液も血管外に出るため浮腫も生じているはずです。

その浮腫を「炎症性浮腫」と言っているようです。


また、疼痛物質として知られている

ブラジキニンは血液凝固に伴い産生され

ヒスタミンの15倍も血管透過性亢進作用があるようで、

さらに組織を腫脹させ浮腫を生じさせる。





評価について

術後は手術侵襲により、炎症反応が生じます

ご存知のように、炎症所見の中に

「発赤」「熱感」「疼痛」「腫脹」(ケルススの4徴候)

「発赤」「熱感」「疼痛」「腫脹」「機能障害」(ガレノスの5徴候)


そのため、術後の膝関節にも上記の確認が必要となってきます

視診にて発赤

触診にて熱感

問診にて疼痛(安静時)

周径にて腫脹


そして、浮腫の要素がどうか

圧痕が残るかも確認


病院等で血液データが確認できるのであれば

CRP値も確認が必要かと思います。


細かく言うと皮膚と皮下組織の変化の程度、部位・範囲などを記録しておくと経過が追いやすいですね。



執刀医に確認できるのであれば

手術記録や手術時の出血量、術中操作で特別な部分があったかなども情報として持っていると経過や他の患者との比較する上でより細かく把握できるかと思います!!





介入方法について(治療や指導)

よく言われているのは

腫脹⇨寒冷療法、挙上、圧迫など

浮腫⇨運動療法、圧迫など


今回は、術後の炎症性浮腫の状態に関しての私の考えを記載させていただきます



疼痛の生じない範囲で、自動介助~自動運動

⇨筋ポンプ作用を狙って!!


肢位はどれでもいいと思いますが、

個人的には、自主トレーニングにも反映しやすい

長座位や端座位をよく用います



ポイント

低負荷の運動で過剰な収縮、代償を極力減らせるか?

 循環不全~筋スパズムの予防、今後の筋出力~動作に繋ぐ


膝周囲の圧迫を併用する

 透過性亢進した血管内圧以上の圧で、膝周囲を圧迫

 ⇨透過性亢進による血管外遊出を最小限にする。

  圧の程度は手を乗せる位で十分と思います




経過の確認で腫れの増悪を防げるか 

 炎症所見の増悪がないか?狙っている腫れが引いて、

 改善したい機能向上~動作獲得に反映しているか?


いつも通りしっかり考え続ければいいかと思います。





まとめ


腫脹と浮腫は、現象は同じでも

発生機序や対処法は大きく異なり、

セラピストの判断で軽減するか否かの結果が左右される。

患者を疑う前に自分自身の評価を疑うべき


炎症性浮腫

血管拡張・血管透過性亢進により腫脹(浮腫)を引き起こす。

術後は腫脹となりがちですが、腫脹だけではない!




評価について

・視診にて発赤

・触診にて熱感

・問診にて疼痛(安静時)

・周径にて腫脹

圧痕が残るか

血液データも確認




介入方法について(治療や指導)

術後の炎症性浮腫の状態に関して


疼痛の生じない範囲で、自動介助~自動運動

⇨筋ポンプ作用を狙って!!



ポイント

低負荷の運動がいい

膝周囲の圧迫を併用する

経過の確認で腫れの増悪を防ぐ




最後まで読んでいただきありがとうございました。

今後ともTKAに関与する内容を中心に発信していこうと思います


臨床や実習で悩んでいることがあれば是非是非一緒に考えていきたいです。

メッセージお待ちしてまーす( ̄∇ ̄)!!